店を二、三軒訪問、お客に扮して店先で中の様子を伺う。種田が先頭。店の大半が、飲食風景を通路から確認できる。残りの店舗は、レジまで踏み込まないとわからない凝った造りだ。壁を無駄に水が流れ、笹と竹、それに暖色の照明。昼間でも覆った笹が暗闇を演出してる、種田の意義に反する店ばかり。その間に、観客とお客を視覚が判別。
「どこかで昼食を取りましょうか」時刻は午後七時の手前。
「うれしい提案、もちろん賛成です」
円筒形、吹き抜けの最下層を調べ終えて、二人は通路に向かった。
事件が起きた事実を店員たちは知らないものがほとんど、数人は店の様子を見せてもらうために提示する手帳を見て、好奇心むき出しのしまりのない表情で詳細を尋ねていた。
足を止める、パスタの食品サンプルが斜めに見やすく、ショーケースに配置。そのため、お客の姿は中へ一度入らなくてはならなかった。パスタは比較的調理時間は早いだろう、刑事である佐山も食事は長々とおしゃべりに講じたりはしない、種田は予測し、店をくぐる。店員がにこやか、エプロンをつけた女性に案内されて、席に着いた。腰を落ち着けて、種田はきいた。
「勝手に決めましたが、よろしいですよね?」
「ああ、ええ、それは、まあ」戸惑い、佐山は食事の主導権までも奪われたことにやっと気が付く。しかし、反論はあっても喉におさめたみたいだ。
「カルボナーラを注文しておいてください」種田は立ち上がり、オレンジを基調とした店内を見渡す。こういったビル内の飲食店では、店舗内にトイレを作らない。観客を探しならが、視線をさまよわせる。案の定、店員が声をかけた。何度もお客の態度に携わった、少々威圧的な決め付けの教示だった。
「お手洗いでしたら、店を出て左です」
「そうですか」食べ終えた皿を持ってお客の行動を先読みした店員、その肩口の先に、男女のペアを見据えた。確か、特別室のお客。種田は直進、マッチ棒のように細さの追求と首と顔の境目がくっきりと目立つ女性に声をかけた。種田の真横は、体型維持を食事の過剰摂取によって無理やり脂肪を蓄えているとか思えない男性。