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水中では動きが鈍る 4-6

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「ああ、失礼。はい、そうです、署内で関係性は取り沙汰されていません」熊田がフォローする。
「ありがとう。事件が未解決のままなのはそれが理由です」
「銀行強盗犯が殺人犯だと言いたいのですか?」食って掛かりそうな種田が言葉のあらを探すように美弥都に質問をぶつけてくる。しかし、美弥都には影響はない。むしろ、種田を利用して追い風を生み出しているようだ。
「いいえ、そうではありません。現在も銀行強盗犯は捕まっていませんね?」
「はい、おそらくは。ただ、私たちは担当ではないので……。何なら署に聞いてみますか?」
「お願いします」種田は熊田からの目配せで署に待機中の鈴木へ連絡した。確認作業ために一旦切られた通話。折り返しの連絡は数分後にやってきて、彼が言うには銀行強盗も殺人事件同様に迷宮入りの様相だそうだ。駐車場で発見されたバッグやドアに挟まっていた1万円札についても何一つ犯人につながる証拠は出ていない。乗り捨てられた車からは毛髪が検出されいなかった。逃走に使用した車は証拠隠滅を図った可能性に加え、予め置かれていた車への細工が考えられると、鈴木から伝えられた。熊田は思いの他の長電話に鈴木が一方的に話しているようだと種田の相槌の回数だけ苛立ちが増した。聞き出したいのは、強盗犯が捕まっているかどうかである。
「まだ捕まっていませんね」携帯を耳から離し、二人を見やって種田は言った。
「そう、ありがとう。随分と話し込んでいたようですが何か補足情報でもあったのかしら?」
「あなたに話して良いのかどうか私には判断しかねます」また、攻撃的な種田の態度。
「お前ここまで来て何言ってる?」
「やはり警察以外に情報を安易に伝えるのは不謹慎です」体を熊田に向けて向かい合う。めずらしく種田の顔に表情が浮かんでいる。
「また死人が出てもか?」
「……」その一言で種田は声を失う。事件についてはあれこれと詮索するのに、次の被害者を思うと足がすくんでしまい、事件の解決とさらなる被害者とを天秤にかけたのだろう。未だにその答えは種田には出ていない。沈黙がその答えであろう。
「死人は出ませんよ、だってもう犯人は亡くなっているんですから」突然と美弥都の言葉に二人は一瞬何がなんだかわからなくなった。はいあなた、死にましたよと幽体離脱の体で車にはねられた自分を傍から見たているような感覚である。現実であるのにそうではない感覚。
「それは何、どういう意味で……」
「言葉通りよ、犯人はすでにこの世にはいない。一件目被害者と二件目の被害者は銀行強盗犯の一味なんだから」美弥都は空の色は青でしょう、と当たり前を口するように熊田に言ってのける。
「えっ?」熊田と種田の驚愕の声が重なる。