コンテナガレージ

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手紙とは現実を伝えるディバスである1-4

「その時点で警察が来ていることは知りえた。なぜ、凶器を別の場所に移さなかったのでしょうか。業者がメンテナンスに取り掛かるまでに時間の余裕があったとはいえ、凶器が見つかれば熊田さんの指摘で彼女は窮地に立たされます」

「緊急的な隠し場所としては確率が低く、ましてメンテナンス業者の動きをあの時点、つまり殺人を他の社員に隠している状況では止められなかったのは事実だ。そこまで計算していたのかは、まあ、判断は難しいけど、メンテナンス業者が作業に取り掛かる日にちぐらいは計画的な犯行だったならば、知っていて、犯行計画に組み込んだ、と考えてもおかしくはないよ。たとえ、エレベーターが調べられたとしても、それは犯行からかなり時間が空いて見つかるだろうし、二機目に取り掛かったのは午後を過ぎてからだ、短時間の場合の予測では、それまでに彼女は解放されると思っていたんだろう。外に出れば、現在行方をくらましているのだから、逃走も止む終えない事態だと思っていた」

「まったく説明には納得ができない」

「何いってのさぁ」鈴木は種田に若干引いて発言の意味を訊いた。

「わざわざ階段に見つかるように隠した意味が理解できません。それならば、窓から一欠片ずつ投げてしまっても良かったように思うのですが、いかがでしょうか?」

「エレベーターは常に動いていた、それも三つの内の一基はメンテナンス中であった。他の二機は当然稼動は頻繁と予測される。すると、最上階まで無意味に上がる間の回収が難しかった。また、彼女は社長代理で仕事をも任された、時間的な余裕は少なかった。仕事に一区切りがついた頃に、私は彼女を会議室に呼んだ。ただ、この時点で彼女がエレベーターに凶器を隠しているとはまったく考えていない。まだ彼女への容疑も薄い。しかし、振り返ると彼女は行動を起こしていなかった。残したのか回収できなかったのか、さだかではないが、解放された階段の踊り場の鉢に凶器を隠した理由については、また別の意味があるのかもしれないな」

「別の意味、ですか?」鈴木が鸚鵡返し。

「私は熊田さんと日井田さんが階段の利用に踏み切った経緯を知りたいのです」種田は駄々をこねるようにはっきりと意志を貫く。